(1)ストレッチングの時間は20~30秒
慢性的にROMを増加させるためのスタティックストレッチングの時間として最も効果的なのは30~60秒であることが報告されている。
一方で、ウォーミングアップの一つとしてほぼ全身のストレッチングを実施する際、一種目に30秒以上もかけていては10種目でも5分以上かかってしまい、ストレッチング以外のウォーミングアップ種目ができなくなってしまう。したがって、慢性的に柔軟性を高めることを目的とする際には30秒以上、ウォーミングアップの一つとしてストレッチングを活用する際には20秒程度を目安にするとよい。
その根拠は、ストレッチングを始めて5~10秒程度は、ストレッチング感を確認したり、ストレッチの程度を調節したりするのに必要で、その後少なくとも15秒程度は適切な伸展状況でストレッチングが実施される必要があるためである。
(2)ストレッチングする部位を理解し意識する。
ストレッチングが正しく行われていることを指導者と実施者が互いに確認するためには、どの部分がストレッチされているのか共通認識を持つ必要がある。また、伸びている感覚を意識させることでストレッチングの効果が高まると考えられている。
(3)痛くない程度に気持ち良い程度に伸ばす
痛いと感じるほどストレッチングすると、伸長反発が働き、筋が過緊張することでますます筋を伸ばせなくなる。伸張反射が働かない程度の長さでストレッチングするための強さの目安として、「最大伸長に近いが痛いと感じない程度」が推奨される。
(4)呼吸を止めないように意識する。
体幹を屈曲させたり、捻ったりするような胸腹部を圧迫するようなストレッチングでは、呼吸が止まりがちである。それにより、血圧が上昇する場合があるので、ストレッチングに慣れてない人や高齢者に対しては呼吸をしっかり意識させる指導が必要となる。ゆっくりとした深い呼吸は緊張を和らげる効果もあるので、効果的で安全なストレッチングのためにストレッチング中の呼吸は極めて重要である。
(5)目的に応じてストレッチング部位を選択する。
ウォーミングアップやクーリングダウンでストレッチングを行う場合には、運動で使う筋を主体に実施する。それは、主運動でよく使われる筋温を上昇させたり、運動後の筋緊張を緩める効果があるためである。そして、それにより傷害を予防することが可能であると考えられるからである。