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熱中症の予防対策

熱中症の予防対策

熱中症に対する予防対策としては、運動実施者、運動環境の両面から考えていく必要がある。また、熱中症を発症させないための予防的な見地と、一次救急処置の見地から考えていくことも必要である。

 1.1 熱耐容能

Kenneyによると、以下に当てはまる者は熱耐容能が低下していると推測される。

  • 高齢者
  • 体力(特に持久力)低下者
  • 薬物服用者
  • 高血圧症患者
  • 肥満者
  • 熱環境未順化者

1.2 湿度、気温などからみたスポーツ実施許可の判定基準

WBGTによる熱中症の警告

WBGT 危険度 警告
18℃未満 低い 熱障害は起こり得るので、やはり注意が必要
18~22℃ 中程度 熱障害の症候に注意し、必要ならペースダウン
23~28℃ 高い ペースダウン トレーニング不十分者は中止
28℃以上 極めて高い ペースを十分に落としても、不快競技を行ってはならない。

WBGT(湿球黒球温度)

屋外 : 0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度

屋内 :  0.7 × 湿球温度 + 0.3 × 黒球温度

(Hughson et al.1983より)

1.3 運動実施時の水分および電解質の補給

汗中には塩分が含まれており、その濃度はしばしば0.5~0.6%に達することもあり、激しい運動で発汗量が2Lに達するときには、塩分損失が10g前後になることも考えられる。

それゆえ、運動実施時にはこまめに休息をとり、水分を摂取することが重要である。McArdleによれば、20~30分ごとに休憩をとり、各休憩ごとに200mlくらいの水分補給をしていくことが、一般的な方法と思われる。

また、大量発汗時には、少量の塩分を含ませた水分を摂取することが重要である。

水分補給のめやす(McArdle et al.1991)

  • スポーツ開始前(1~2時間前)に500mL程度の水分を摂る。
  • スポーツ実施中には15~30分ごとに200mL程度の水分を摂取する
  • スポーツ開始前と実施中とで失われる水分の80%を補給し、残りはスポーツを終了した後に補う。
  • 水温は5~15℃が飲みやすい。
  • 0.2%程度の食塩と、糖分を5%程度含むものが適当

1.4 熱中症発生時の応急処置

熱中症の予後を決定する最も重要な要素は、冷却および水分補給(電解質補給も必要に応じて)と考えられている。いかに速やかに高体温を低下させ、水分を補給できるか否かによって、突然死するか、後遺症を残すか、まったく問題が残らずにすむか、が決定すると言われている。

冷却の方法としては、頸部、腋窩部および大腿部の付け根に氷あるいは冷水を入れた氷袋を置き、皮膚表面近くを走行している動脈内の血液を冷却することがよく利用される。

さらに、最近では霧吹きなどで水分を皮膚表面に吹き付け、うちわなどであおぎ、気化により熱が奪われる効果を利用する方法も使用されている。

水分補給の方法としては、意識の有無により飲水あるいは点滴静注のいずれかの方法がとられる。また通常の脱水状態であれば、水分のみあるいは0.1%程度の濃度の食塩水を与えることで十分である。

大量の脱水が予測される場合には、0.9%濃度のいわゆる生理的食塩水をひとまず予測される脱水量の80%程度を目標に静注することが必要になる。大量の脱水時に水分のみを大量に補給すると、かえって低ナトリウム血症をもたらし、筋痙攣つまり熱痙攣を誘発してしまうという報告もある。状況に応じて、電解質特にナトリウムの補給を考慮して水分補給を行っていくことが重要な点である。